リアルな夢?―西洋人向けの中国イメージ
18世紀末から19世紀後期の清朝で、西洋向けに制作された輸出用絵画。伝統的な中国絵画の表現技法を修得した中国人絵師たちが、西洋由来の油彩や水彩などの画材と遠近法や陰影法を取り入れた技法で、綿布や紙、絹、象牙、磁器などに描いた。外国商館の建ち並ぶ広東十三港や上海外灘(バンド)などの風景、宮廷行事や商人の生活など中国特有の風俗、茶や絹など代表的な輸出品の生産工程、皇帝や貴婦人などの人物像が異国情緒豊かに表現され、西洋人の関心をひいた。また、現存作品は少ないが、シンガポールやカルカッタ(現・コルカタ)など西洋との交易ルート上にあった都市風景なども残されている。阿片戦争(1840~42年)以前は清朝の唯一の貿易港だった広東に多くの工房があったが、以降は香港や上海にも工房が設立されている。
作者不詳 (輸出用中国絵画) 《広東のコンスクワー邸 #1》 19世紀初頭 油彩・画布
作者不詳 (輸出用中国絵画) 《広東の商館》 1850年頃 油彩・画布