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ジャン・シャオガンは、文化大革命により中国全土が大きく混乱した時代に子供時代を過ごした。1990年代前半、ジャンは文革期の家族写真に着想を得た肖像画の制作に取り組み始める(本作もそのうちの一点である)。そしてこの試みのなかから、彼の代表作となる「血縁」シリーズが展開することになる。ノスタルジーを含んだどこか幻想的なタッチで写真館の家族写真を思わせる肖像を描く同シリーズは、世代ごとに目にしてきた現実が大きく異なる現代中国社会の状況、さらには中国における集団と個人の関係を反映したものとして、国際的に高い評価を獲得した。
《若い娘としての母と画家》は、若き日の母と、作者の自画像である。人民服を着た娘時代の母が、セピア調の色彩で儚げに描かれているのに対して、真っ黄色の顔で目を見開く作者は異様な迫力を放ち、家族として隣り合いながらも隔たりが感じられる。不穏ともいえる作者の顔色は、家族がこれからたどる波乱の歴史と、深い傷跡を暗示している。周囲には天安門が映ったテレビなど、謎めいたモチーフが散りばめられ、それらを赤い糸が結んでいる。作者は、国家を「巨大な家族のようなもの」と語っている。彼が描く家族の肖像は、親子だけではなく、個人と国家の複雑な血縁関係をも描いているのである。
《若い娘としての母と画家》
1993年
福岡アジア美術館所蔵
ジャン・シャオガンは、文化大革命により中国全土が大きく混乱した時代に子供時代を過ごした。1990年代前半、ジャンは文革期の家族写真に着想を得た肖像画の制作に取り組み始める(本作もそのうちの一点である)。そしてこの試みのなかから、彼の代表作となる「血縁」シリーズが展開することになる。ノスタルジーを含んだどこか幻想的なタッチで写真館の家族写真を思わせる肖像を描く同シリーズは、世代ごとに目にしてきた現実が大きく異なる現代中国社会の状況、さらには中国における集団と個人の関係を反映したものとして、国際的に高い評価を獲得した。
《若い娘としての母と画家》は、若き日の母と、作者の自画像である。人民服を着た娘時代の母が、セピア調の色彩で儚げに描かれているのに対して、真っ黄色の顔で目を見開く作者は異様な迫力を放ち、家族として隣り合いながらも隔たりが感じられる。不穏ともいえる作者の顔色は、家族がこれからたどる波乱の歴史と、深い傷跡を暗示している。周囲には天安門が映ったテレビなど、謎めいたモチーフが散りばめられ、それらを赤い糸が結んでいる。作者は、国家を「巨大な家族のようなもの」と語っている。彼が描く家族の肖像は、親子だけではなく、個人と国家の複雑な血縁関係をも描いているのである。