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用語集

戦後のリアリズム 

廃墟の現実から立ち上がれ

戦中から戦争直後の時代、1940、50年代は、東南アジアのモダンアートの歴史のなかで、いわばリアリズムの季節であった。フィリピンでは、ドミトリオ・ディエゴ(1909–1988)やカルロス・フランシスコ(1912~1969)ら多くの画家が、戦争直後の時期に、悲惨な戦争の実態をリアリスティックに描いている。しかし、実際に戦争の情景を戦中に描いて、このようなリアリズムの呼ぴ水となったのは、保守派の大御所フェルナンド・アモルソロ(1892~1972)であった。彼は、もともと甘く感傷的でかつエキゾティックな女性像や風景画を得意としていたが、戦中の時期には、攻撃にさらされ、破壊されたマニラの街を歩き、その荒廃した様子をスケッチし、それをリアリスティックな油絵に仕立てた。一方英鎖マラヤ(マレーシア・シンガボール)は、もともと中国との関係が強いこともあり、国際的な共産主義運動の影響もあって、社会主義リアリズム風の、社会の底辺で働く貧しい人々が描かれることが多かった。装飾的な作風で知られるシンガポールのチェン・ウェンシ(陳文希、1906~1991)やチョン・スーピン(鉗洒賓、1917~1983)もこの時期市井の労働者を好んで取り上げている。ほかに、チュア・ミアティ(祭名智、1931–)、リー・ポンウォン(李文苑、1934–2016)、リン・ユークァン(林友権、1928–))らが社会的な主題のリアリズム絵画に取り組んだ。その他、ベトナムでは、抗仏戦争、抗米戦争を戦いながら、戦う人民の姿が社会主義リアリズムによって描かれた。

 

フェルナンド・アモルソロ 《廃墟のイントラムロス》 1945 油彩・画布

チェン・ウェンシ(陳文希) 《休息》 1950年代 油彩・画布

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