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用語集

カンタ

日用品から芸術へ

バングラデシュとインド西ベンガル州を含むベンガル地方の女性たちによってつくられてきた刺し子の布のこと。古いサリーや腰巻布などの薄い木綿布を折り重ね、全面を覆うように刺し子を施し、敷布や布団として再利用する庶民の日用品である。とくに結婚式や宗教儀礼のハレの日に用いるものには、ヒンドゥーの神々、蓮や生命の樹の吉祥文様がサリーの布をほぐして取った色糸で装飾的に刺繍され、のちに民俗芸術として評価された。独立後のバングラデシュではカンタが商品化され、新しく「ノクシ・カンタ」として国内外で販売されるようになった。戦争などで生活手段を失った女性たちの経済的自立のため、NGOの援助事業の一環としてつくられたのである。商品化により、デザイナーは村の女性から都市の男性へ、素材は古布や古糸から新しい布や化繊へ、用途も敷布から絵画のように鑑賞するものへと変化し、最貧国イメージを払拭する豊かでポジティブな「バングラデシュらしさ」を象徴する手工芸品となった。

BRAC(バングラデシュ農村向上委員会)/アーロン 《ラクシュミーのいる蓮と山車/壁掛け》 2000 刺繍・布

BRAC(バングラデシュ農村向上委員会)/アーロン 《黄金のベンガル/壁掛け》 2000 刺繍・布

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