もともとは正月に民家の門や室内の壁に貼り一年の安寧を祈願するための絵画。招福厄除の祈りを込めた神像や、子孫繁栄、長寿、豊作を意味する吉祥図、古典故事の英雄や美人の図が多く、単純明快な構図と原色を用いた鮮やかな色彩が特色(中国共産党は、文字の読めない人民の情宣活動に有効と考え、抗日戦争、解放戦争を通じて利用した。解放後(編注、1949年の中華人民共和国成立後)の年画は「新年画」とよばれふたつのジャンルに分かれる。ひとつは1930年代に上海を中心に流行した商業ポスターを踏襲する様式で、渇筆に木炭の粉をつけて紙に擦りつけて陰影をつくり立体感を出す。もうひとつは、木版画に由来する太い線描と平塗りが特徴の延安様式。ともに、指導者や子どもや模範的な労慟者が描かれる。
(堀川理沙)
初出=「作品ジャンルで知る中国美術」、特集「入門★中国美術」、『美術手帖』887号(2006年10月号)、75頁